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前処理基本ポイント-食品サンプル

食品サンプルの前処理のポイントといくつかの注意点

 まずはじめに、食品を味覚センサーで測るためには適当な前処理が必要となります。弊社での経験から前処理時のポイント、考え方や注意点をまとめました。測定目的に合わせて適当な前処理を実施してください。サンプル前処理に必要な器具一覧はこちらをご覧ください。


Ⅰ)サンプルの状態による違い

サンプルが液状か固形物かによって、前処理の方法が異なります。

◆液状のもの

液状のサンプルはそのまま、または適度に希釈します。油脂や固形物が含まれていれば除去します。

◆半固体状のもの

希釈・撹拌することにより、液状にします。油脂や固形物が含まれていれば除去します。

◆固形のもの

希釈・撹拌して、液状にします。油脂や固形物が含まれていれば除去します。

粉砕・撹拌には、フードプロセッサーやハンドミキサー、ストマッカーなどを用います。目的や状況により、適当な器具をお選びください。

フードプロセッサーとストマッカーの選び方については、下記の◆ストマッカーとフードプロセッサーの使い分けをご参考ください。


Ⅱ)前処理のポイント

◆調製水は下記を用います。

希釈に使用する水は、超純水、イオン交換水、蒸留水、など、精製された水をご使用ください。
※水の硬度の違いによって、サンプルの味や味物質の抽出効率が変わりますのでご注意ください。       


◆基本は食べる状態にしてから前処理を行います。希釈や液状化の処理が必要な場合は、この後に行います。

<例>

● 粉末スープなどはパッケージの説明書どおりに作ります。

● コーヒーやお茶は一定の方法で抽出します。

● 濃縮タイプの調味料は規定どおりに希釈します。

● 調理して食べるものは一定の方法で調理します※。

● 冷凍食品やレトルト食品などは、パッケージの記載にしたがって解凍・加熱します。

※調理の際は加熱ムラがないようにご注意ください。また、焼き色や焦げのついた部分は基本的には取り除きます。味の状態が不均一になり、評価が困難になります。

※原料の比較には下記をご参照のうえ、お問い合わせください。


◆希釈倍率は、下記を参考に決めます。事例としては3倍・5倍・10倍が多いです。

  1. 粘性
    粘性のあるサンプルは、測定時、センサープローブに付着しない程度に薄める必要があります(他の溶液への持ち込みを防ぐため)。
    ※粘性の味への影響を調べたい方は弊社までご相談ください。
  2.  
  3. 導電率(味覚センサーでの測定時には、電気を通すためのある程度の“塩”が必要です。粉末試薬や本みりんなど、極めて導電性が低いサンプルを測定する場合には、「純水以外の溶液を溶媒とする場合の測定方法」および ◆調製水として純水以外の溶液を溶媒とする前処理もあります。をご参照ください)
    1~10mS/cmを推奨しておりますが、0.4~30mS/cmでも実績があります。
    例外として、ミネラルウォーターは、0.1mS/cm程度ですが、そのまま測定しています。
  4.  
  5. 旨味物質に対する濃度特性
    旨味物質は濃度が高い(MSGで約0.2%W/V以上)とセンサー出力が弱まる可能性があります。このため、ラーメンスープ、麺つゆなど旨味の濃いものは希釈する必要があります。

◆味物質の抽出のため希釈に使用する調製水の温度は、下記を推奨します。

 油脂は溶ける温度が種類によって変わります。溶け方で味も変わりますので、特に動物性油脂を含む食品の前処理では喫食時の温度に合わせて前処理することをお勧めします。

  1. 油脂を含まない(あるいは少ない、油の味が重要ではない)ものは常温
    例:めんつゆ、ドレッシングなど
  2.  
  3. 油脂を含み、かつ、そのまま食べるものは40℃(=体温に近い温度)
    例:生ハム、惣菜、チョコレートなど菓子類など
  4.  
  5. 油脂を含み、かつ加熱して食べるもの、または油脂の味が重要なものは60~90℃(=調理時に近い温度)
    例:タレ類、カレーなど

注)②③とも、得られた溶液を室温に戻してから測定します。


◆固形物は、ペーパーフィルターで漉したり、遠心分離で取り除きます。

 

● ペーパーフィルター等でのろ過で目詰まりが発生する場合は、遠心分離または金ざるで固形物を除去してください。除去しきれず細かい固形物が残った場合は、さらにペーパーフィルター等でろ過をしてください。

● 遠心分離の回転数は、弊社では3000回転(遠心力1661(×g))、10分間で行っています。

● 遠心分離後は速やかにデカンテーションを行ってください。

● 特にご飯などのデンプンを多く含む食品は沈殿物が浮遊しやすいため、溶液中に沈殿物が混入しないよう気を付けてください。

● 油脂の融点が高い場合は(牛脂、豚脂など)、氷水で冷却し、遠心後、表面に浮いた油脂を薬さじで取り除いてください。細かく浮遊した油脂は紙茶こしでろ過することにより除去してください。


◆油脂の除去方法は、遠心分離を行うことが多いですが、下記の方法も可能です。また、これらの方法と遠心分離とを組み合わせるのも効果的です。

 

● 油吸着シートを使用し、表面に浮いている油を除去する。

● 融点が高い油脂の場合は、冷却により取り除くことが可能です。ただし、乳化剤が多く含まれる食品の場合は、冷却だけでは取り除けないので遠心分離を行ってください。

● 油脂は基本的には除去が必要ですが、若干の油浮き(コンソメスープ程度)があっても測定可能です。ただし、センサー耐久性に影響することが考えられますので、保守測定を頻繁にすることや洗浄測定をお勧めします。

    油吸着シート:市販品、外食産業などで使われているもの
  ペーパーフィルター:市販品、紙製の茶漉し
  洗浄測定:センサーを洗浄するための手順


◆調製水として純水以外の溶液を希釈液とする前処理もあります。

 味覚センサーでの測定には、安定した測定を行うためにある程度の導電率が必要です 。 みりんなど導電率が低いものを測定する場合には、10mM KClなどのように、ある程度導電率が保たれた溶液を溶媒としてサンプルを調製します。弊社では、このようなサンプル調製方法のことをベースアップと称しています。ベースアップの溶媒としては、基準液1に対して純水2の割合で混合(重量希釈)した溶液を使用する場合もあります。(本サイトではこれを1/3基準液として表記しています。)

ベースアップを行った場合には、容器設置板サンプルA位置に調製に使用した溶媒を置いて測定を行い、解析時に溶媒の応答分を差し引くという流れになります。解析手順は、ご使用の解析アプリケーションをご確認の上、以下の資料をご参照ください。

【TS-5000Z】
・Windows10対応解析アプリケーション
ベースアップした場合の解析フローチャート(TS-5000Z Win10)(IST-SS020A03009)
・Internet Explorer版解析アプリケーション
ベースアップした場合の解析フローチャート(TS-5000Z IE)(IST-SS020A03008)
【SA402B】
ベースアップした場合の解析フロチャート(SA402B)(IST-SS020A03007)


◆均一でないサンプルの場合は、偏りがないように全体を粉砕・混合したものから採取します。

<例>

● お惣菜の様な複数の具が含まれている場合:1パック全量をフードプロセッサーにかけ、均一な状態にした上で、必要量をそこから採取し、液状化の処理を行ってください。

● 漬物、菓子パンの様なサンプリングする場所によって味の濃さが変わる場合:お惣菜と同様な処理方法、または、同じ箇所からサンプリングするなど条件をそろえてください。

● 農産物など個体差のあるサンプルの場合:複数の個体を測定し、グループ内のバラツキおよびグループ間差を考察します。


◆粕漬け、みたらし団子など、表面に調味料が付いているものは、付着具合のバラツキが測定結果に影響します。下記の方法などを用い、評価します。

 

● あらかじめ除去してから、処理を行う。

● その調味料だけをサンプリングし、測定する。

● 再現性を検証し、サンプル間の差が有意であるか確認する。


◆ストマッカーとフードプロセッサーの使い分け

ストマッカーは人間の咀嚼に近いサンプル液を作る際に使用します。
人間の噛む速度は約2回/秒(社内テストにより)、5ストローク/秒は人間の噛む速度と近い条件で処理できると考えています。
フードプロセッサーは水と固形物をしっかりと混ぜ合わせることにより、水に溶解する味物質をほぼ完全に抽出します。

<ストマッカー>
メリット:人の咀嚼と近い条件で、味物質を抽出できる
デメリット:完全抽出ではないため、前処理のバラツキが出やすい(サンプル間の差が微差の場合、再現性が得られない可能性がある)
使用例:惣菜などの自社製品と他社製品の比較

<フードプロセッサー、ホモジナイザー、ハンドミキサー>  
メリット:ほぼ完全に味物質を抽出できるため、前処理のバラツキが出にくい  
デメリット:人の喫食時は液状化になるまで咀嚼しないため、喫食時の条件と合わない可能性がある  
使用例:ロット間差、劣化評価など

使い分けのポイントの一例