甘味評価の前処理ポイント
GL1(甘味)センサー測定の前処理方法
GL1センサーをご利用になる場合には、GL1センサー取扱説明書 と甘味センサー紹介も合わせてご覧ください。
甘味センサー(GL1)の妨害物質について
1.過剰の塩分
高濃度の塩分(目安として10mS/cm以上)により、甘味応答性が減少していくことを確認しています。
→脱塩処理により、甘味測定が可能になります。
脱塩処理についてまとめた資料は甘味センサー「GL1」測定のための脱塩処理についてをご覧ください。
脱塩サンプルの調製の流れ
- 糖濃度が 3%以上見込めるサンプルを準備し、導電率を測定する。
- 通常測定用のサンプル 60mL を 200mL 等の大きめのビーカー等に取り、導電率が 10mS/cm 未満になるよう脱塩樹脂を加える。
- ビーカーに攪拌子を入れ、スターラーで 10 分間攪拌して脱塩を十分に進行させる。
- 紙茶濾しなどで脱塩樹脂を取り除いた溶液を GL1 測定用サンプルとする。
脱塩処理のポイント
- 処理前のサンプルは脱塩樹脂の使用量を抑えるために希釈サンプルの方が望ましいですが、希釈しすぎて糖濃度 3%を切らないように注意してください。希釈して糖濃度 3%の確保が難しい場合は原液を使用してください。
- 測定に必要なサンプルの液量は 35mL あれば十分ですが、脱塩処理を行うと塩の樹脂への吸着や濾過によるロスにより、液量の減少が見込まれます。そのため処理前サンプル 60mL に脱塩樹脂を添加する方法を推奨します。
- 脱塩効果はサンプル 60mL に対して脱塩樹脂 1g で導電率をおよそ 1mS/cm 下げることができます。
ただし、サンプル液によって脱塩能が若干異なるので、念のため多少多めに樹脂を加える方が望ましいです。
(例えば脱塩前の導電率が 15mS/cm なら 8g ほど加える) - 導電率が測定できない場合は、塩分濃度でも脱塩樹脂添加量を見積もることができます。
塩分濃度 0.5%の変化で、導電率は約 9mS/cm 変化するので、例えば塩分濃度が 1%であれば導電率は約 18mS/cm なので 10g ほど樹脂を添加すれば良いことになります(下記図参照)。

サンプル前処理例
<焼肉のタレ>
- 糖濃度が3%以上になるように、サンプルを希釈する。
糖濃度が25%の焼肉タレの場合には、希釈倍率は5倍程度まで - サンプル溶液にイオン交換樹脂を添加する。
陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂を混合した両イオン交換樹脂を用いる(写真は三菱化学㈱製SMNUPB)。
・樹脂は水に不溶です。
・両イオン交換樹脂は、本来の用途はほとんどが純水製造です。食品サンプルに用いるとサンプルのpHが変動することがあります。
・最適な添加量は予備実験によって決めます。必要以上に脱塩しないことが望ましいです。
・サンプル中に油分等があると、樹脂が目詰まりしやすいため、あらかじめ遠心分離などで除去してください。 - 10分間よく攪拌する。
ここで、塩分が樹脂に吸着される。
・できれば振盪機(90rpm)あるいはスターラー(700rpm)を用いてよく攪拌してください。
・時間が長い方が塩分の吸着量が多くなります。10分間は目安です。 - 紙茶こしでろ過し、測定サンプルとする。
導電率が10 mS/cm以下であることを確認する。
<醤油>
- 醤油の3倍希釈液を60gだけ取り、両イオン交換樹脂(三菱化学製「SMNUPB」)を50g添加する。
- スターラーで10分間攪拌する(700 rpm)。
- 紙茶こしでろ過し、測定サンプルとする。
- 確認のため、導電率とpHを測定する。

三菱化学㈱製両イオン交換樹脂SMNUPB
2.過剰な渋味成分
渋味成分により、甘味応答性が妨害されることを確認しています。
→ポリビニルポリピロリドン(PVPP)処理により、測定が可能になります。
渋味成分除去の方法:
- サンプル100mLにつき2gのポリビニルポリピロリドン(PVPP)粉末を加える。
PVPPは水に不溶です。コーヒーやチョコレートの場合は、2gではなく6gとしてください。 - 10分間よく攪拌する。
ここで渋味成分がPVPPに吸着されます。 - 遠心分離(3000rpm、10分間)もしくはろ紙でろ過し、測定サンプルとする。

Fluka Poly (vinylpolypyrrolidone)
甘味センサー(GL1)の高感度甘味料の応答について

高感度甘味料の中には、甘味センサーGL1に応答が見られるものもありますが、甘味度とは一致しませんのでご注意ください。